動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=J1n5tg6lg5k
目次
3行要約
- 中国在住歴もあるジャーナリスト・近藤大介氏を迎え、14年に及ぶ習近平体制の権力集中がどこへ向かうのかを読み解く回の前半。高市首相の発言から半年が経つが日中首脳会談の目処は立たず、中国側は謝罪と訂正会見を条件に持ち出してくると見られている。
- 地方の深刻な不景気を背景に「抗日アミューズメント施設」や抗日ドラマが量産される実態を紹介。習近平思想に反しないため検閲リスクが低く、国民にとっても日本批判だけは自由にできるストレスのはけ口になっているという「手段としての反日」の構造が語られる。
- 後半は歴史をさかのぼり、中華思想と冊封体制、日本とインドが海と山ゆえに従属せずに済んだ経緯を解説。アヘン戦争と日清戦争で崩れた秩序を元に戻すのが「中華民族の偉大な復興」であり、その最大の障害が日本だという見立てが示される。
詳細要約
1. 日中首脳会談の見通し
- 高市首相の発言から半年が経過したが、関係改善どころか首脳会談の目処も立っていない。
- 11月18日に香港で開かれるAPEC首脳会議で日中首脳会談を実現したいというのが日本政府の意向。
- しかし中国側は、その条件として高市首相に謝罪と訂正会見を求めてくると見られ、日本政府にとっても国民感情としても受け入れがたいと近藤氏は述べる。
- 習近平氏の歴史観は「中華民族の偉大なる復興」「日清戦争を覆す」という形で固まっており、14年かけて周囲もその色に染まっていると指摘する。
2. 「手段としての反日」――抗日アミューズメントと抗日ドラマ
- 抗日テーマパークの流行
- 中国各地で、抗日パルチザンを体験できるアトラクション型の施設が次々と生まれている。悪役の日本を皆で倒すという内容である。
- 背景にあるのは地方の深刻な不景気。遊園地を作っても人は来ないが、抗日施設なら修学旅行や研修で動員でき、確実に収入になる。
- 地方幹部にとっても「わが省ではこれだけやっている」と中央にアピールでき、出世につながるという構造がある。
- 抗日ドラマが量産される理由
- 現代劇はセリフや背景の小道具まで厳しく検閲され、1カットのミスで100話全体が没になるリスクがある。「ドラマ保険」まで存在するという。
- 抗日ドラマは検閲がほぼ通るため安全で、CCTVの良い時間帯を狙って各社が競って制作する。抗日専門の俳優までいる。
- 国民にとっての「言える批判」
- 「なぜ我々はこんなに貧しいのか」と言えばアウトだが、日本批判と高市批判はネットでもSNSでも何を言ってもよい。
- 生成AIを使ったトランプ氏と高市氏のラブコメ動画のようなコンテンツまで氾濫している。
- ストレスの向かう先がそこに集中してしまう点で危険な兆候だと近藤氏は指摘する。胡錦濤時代にはこうした空気はなく、「日本と一緒にやっていこう」というムードだったと振り返る。
3. 中国共産党の変遷と、消えた民主化の芽
- 1949年の建国当初は他の党派も交えた体制だったが、50年代にスターリンを手本として社会主義路線へ。大躍進、文化大革命を経て1976年に毛沢東が死去。
- 続く鄧小平が改革開放を始め、1989年には格差拡大から民主化運動が起き、天安門事件へ。江沢民を上海から迎えて立て直し、1992年に「社会主義市場経済」が定められた。
- 2012年11月の第18回党大会で習近平が総書記に就任すると、行き過ぎた市場化を戻すとして社会主義・毛沢東路線へ大きく舵を切り、それが14年続いている。
- 近藤氏が北京に住んでいた2009〜2012年、胡錦濤政権末期には民主化への意思があったという。温家宝首相のもとで研究グループが作られ、(1)まず共産党内を民主化する、(2)小さな単位から始めて国家へ広げる、(3)農村部から始めて都市部・首都へ、という3原則が掲げられていた。
- その成果の一つが、2012年2月に広東省の烏坎村で行われた完全に民主的な村長選挙・村民委員会選挙で、各国特派員100人ほどが取材に訪れるほど注目された。
- しかし同年11月に習近平が総書記になると、翌月の広東視察でこの村は素通りされ、代わりに「八項規定」(贅沢禁止令)による引き締めが始まった。
- 民主的なものを求める心情は国民にもあるが、それ以上に混乱を恐れる感覚が強いと近藤氏は言う。中国史は強権とカオスの繰り返しであり、「自由は欲しいがカオスよりはマシ」と考える人も多い。
4. 民主主義モデルの失速と、揺らぐアメリカ
- 資本主義の浸透が政治の民主化につながるという想定は実現しなかった。
- その一因として、アメリカ自身の民主主義が機能不全に陥っている点が挙げられる。対話と妥協ではなく、選挙のたびに勝った負けた・不正があったなかったと憎み合う状況が続いている。
- 新型コロナ対応でも、中国のゼロコロナという強権的手法と、アメリカの「マスクをしない自由」「ワクチンを打たない自由」による公衆衛生の失敗が対比され、「どちらもうまくいかなかった」と総括される。
- 11月にニューヨーク市長に当選した人物が新自由主義の失敗を指摘し社会主義的方向を打ち出したように、アメリカとも中国とも違うモデルの模索も始まっている。
- 近藤氏は中国を「21世紀最大の実験国家」と呼び、14億人を統治する仕組みとしてこのシステムがどこまで機能するのかが問われていると述べる。
5. 共同富裕と経済の矛盾
- 共産党100周年(7月)の翌月、習近平氏は突如「共同富裕」を打ち出した。富裕層の収入を調整し、中間層を増やし、貧困層の収入を上げるという3本柱である。
- まずアリババとテンセントから2兆円ずつを「共同富裕資金」として拠出させたが、5年以上が経った今もうまくいっていない。
- それでも習近平氏は共同富裕を言い続けており、貧富の格差と地方経済の停滞という矛盾を政権が解決できるかが問われている。
6. 「北京詣で」――世界が中国に向かう新たな構図
- 今年上半期だけで20人を超える各国首脳が訪中。CCTVでは連日、各国の大統領・首相と習近平氏が握手する映像が流れているという。
- 象徴的だったのがカナダ。2018年のファーウェイ副会長逮捕以来関係が悪化し、2024年には中国製EVへの100%追加関税に同調して対立が深まっていた。
- しかし今年1月、8年ぶりにカナダ首相が訪中。中国を「今やアメリカよりも予測可能なパートナー」と位置づけ、関係改善と貿易強化を訴えた。
- 各国大使館関係者は「3大国を同時に敵にはできない」と口を揃えるという。ロシアが敵で、アメリカも敵のようになってきた以上、中国だけは掴んでおこうという判断である。
- 1月のアメリカによるベネズエラ軍事侵攻が、同盟国にも事前通告なく行われたことも、対米依存を減らす動きを加速させた。
- EUも年初は貿易摩擦でバチバチだったが、猛暑でエアコンが不足すると中国に増産を求め、関係が一気に改善したというエピソードも紹介された。
7. 非対称な日中関係と、米中の価値観の接近
- 日本にとって中国は最大の貿易相手国で全体の約2割を占めるが、中国にとって日本は4番目で約5%。必要性には4倍ほどの差があり、関係は非対称である。
- 中国に強く出るなら、意図的に依存度を下げていく作業が不可欠だが、生活を支える多くの製品が中国製である以上、時間をかけなければ難しいと指摘される。
- 5月13〜14日にトランプ大統領が訪中した際の首脳会談は合計7時間に及び、「一番盛り上がったのは日本の悪口だった」という話を聞いたと近藤氏は明かす(伝聞)。
- 米中は第二次大戦の同盟国として共に日本を倒し、そこから戦後秩序が始まった。80年経って日本が元に戻そうとしているから米中で正すべきだ――という趣旨の主張が延々と語られ、トランプ大統領は少なくとも反論しなかったという。
- 公開の場でも習近平氏は冒頭から、(1)ツキジデスの罠にはまってはいけない、(2)建設的で安定的な戦略関係を築く、(3)台湾問題に気をつけろ、という3点を上から目線で切り出した。中国語では脅迫に近い調子だったが、英語通訳がマイルドに訳したのではないかと近藤氏は見る。
- 習氏が話し終えた直後にCCTVの生中継は打ち切られ、トランプ大統領の発言は放送されなかった。
- 台湾への武器売却についても「中国といいディールができるなら考え直してもいい」という発言が出ており、かつてオバマ大統領が「新型の大国関係」を突っぱねたのとは対照的に、今は米中の世界観がむしろ近づいていると分析される。
- アメリカ国内では、対外行動にリソースを割き続けた結果として格差が拡大したという不満が強く、「次は中国が脅威だ」という動員に国民が乗らなくなっている。世論調査では、すでに中国に抜かれた、あるいは5年以内に抜かれると考える人の方が多いという。
8. 歴史から見た日中関係――中華思想と冊封体制
- 「中国」とは中央の国・中心の国という意味であり、周囲は東夷・西戎・南蛮・北狄として文明の劣る存在と位置づけられてきた。日本は「東夷」にあたる。
- 冊封体制のもとで属国に課されたのは、独自の暦(元号)を作らないこと、正月に使節団を送り三跪九叩頭の礼を行うこと、王の代替わりに形式的な許可を得ること、国名さえ中国が決める場合があったことなど。それ以外は概ね自由だった。
- 属国が従った理由は、逆らえば攻められるという恐れに加え、中国を後ろ盾にすれば文明を得られ、困った時には助けてもらえるという実利にあった。
- 日本は海に囲まれ、インドはヒマラヤに阻まれていたため、当時の軍事力では攻め込まれにくく、必要な時だけ中国の権威を利用し、不要な時は無視できた。
- 一方で日本は漢字、律令、仏教、稲作、衣服、音楽、豆腐、猫、平城京・平安京に至るまで、あらゆる文明を中国から取り入れてきた。江戸時代まで中国は明らかに憧れの存在だったと近藤氏は述べる。
- 転機は1840年のアヘン戦争。イギリスに大敗した清の情報が幕末日本に伝わり、高杉晋作らが現地を見て「老大国」であることを知る。明治維新以降、手本は中国ではなく西洋へと移り、尊敬の対象は蔑視の対象へ変わっていった。
- 当時の西洋人の記録でも、中国を経由して日本に来た者たちが両国を比較し、日本を高く評価する記述を残している点が紹介される。
9. 「偉大な復興」と、その最大の障害としての日本
- 近藤氏は2012年11月、習近平氏の総書記就任演説を現地で聞いている。そこで掲げられたのが「中華民族の偉大なる復興という中国の夢」であり、以後何百回も繰り返されてきた。
- その意味するところは、アヘン戦争と日清戦争の前に戻すということ。アヘン戦争で失った香港は1997年にイギリスから返還され、ほぼ解決している。
- 残るのが日清戦争で失った台湾であり、それを自分の政権で取り返すというのが目標。そして最大の障害が日本だからこそ、いま日本に圧力が向けられているという見立てである。
- したがって高市首相の発言は「きっかけ」に過ぎず、いずれ対立するのは宿命だったと語られる。
- 日本から見れば中国の軍拡は脅威であり、アメリカが頼りにならなくなれば自前の防衛を固めるしかない。防衛費9兆円、長距離ミサイル、防衛3文書の改定などを進めれば、中国は「日本が新たな軍国主義に走っている」と反発する。関係悪化は必然だと総括する。
10. 56民族を習近平の下に置く3つの法改正
- 今年7月1日に施行されたいわゆる「民族法」(民族団結進歩促進法)は、56の民族すべてを党中央=習近平のもとに置くという内容。
- これを根拠に、9月からは学校でモンゴル語・ウイグル語・チベット語の授業が禁止され、中国語に一本化されたという。
- ウイグル族にはイスラム教を認める一方で「アッラーの上に習近平を置け」、チベットには仏教を認めつつ「仏教の上に習近平を置け」という形になっていると説明される。
- この民族法は3番目の法整備であり、先行して国務院組織法の改正(中央省庁の公務員を党中央の下に置く)、代表法の改正(国会議員・地方議員を党中央の下に置く)が行われていた。公務員・議員・少数民族のすべてを合法的に習近平の下に置く体制がこれで完成したことになる。
- 番組では、民族法が中国国外の個人や団体であっても「民族分離を煽った」と判断されれば法的責任を問われうる規定を含むこと、国連などが新疆での大規模拘束や強制労働などの人権侵害を指摘し、アメリカ政府がジェノサイドと認定していること(中国政府は一貫して否定)も解説された。
- 近藤氏は、皇帝の時代や毛沢東の時代はむしろこれが常態であり、江沢民・胡錦濤の3代ほどが例外的に自由度の高い時期だったと位置づける。習近平氏が理想とするのは毛沢東であり、その毛沢東が理想としたのが始皇帝、そしてスターリン。プーチン氏と48回も首脳会談を重ねて馬が合うのも、スターリンを介した「親戚のような」関係だからではないかと語る。
まとめ・結論
前半の結論は、日中関係の悪化は高市首相の発言という一点から生じたものではなく、「アヘン戦争と日清戦争以前に戻す」という習近平体制の長期目標と、その最大の障害である日本という構図から必然的に導かれるものだ、という見立てです。同時に、頼みの綱であるアメリカは価値観の面でむしろ中国に接近しつつあり、日本は「アメリカと組んで中国を抑止する」以外のプランを持っておく必要があると指摘されます。後半では、尖閣諸島をめぐるリスクと、日本が中国とどう向き合うべきかが論じられる予定で、近藤氏は「尖閣は相当危険な状況になっている。日本に住む中国人たちが本気で日中戦争を懸念し始めている」と語っています。
※本記事は番組の内容を要約して紹介したものです。個々の分析や伝聞情報は出演者の見解に基づくものであり、判断にあたっては他の情報源もあわせてご確認ください。

