第67回 BRICSサミット 日本はそこそこに付き合えば良い【外交官チャンネル〜山上信吾10minutes〜】

https://youtu.be/2U-69MDgBiQ

目次

■ 3行でわかる

① 元駐豪大使の山上信吾氏が、BRICSは当初のブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの5カ国からエジプト、イラン、UAE、エチオピア、インドネシアを加えた10カ国に拡大し、G7へのアンチ勢として対抗軸を打ち出していると解説する。

② しかし「BRICSはBREAKS(壊れる)」であり一枚岩ではない ― 中露イランは権威主義だがインド・ブラジル・インドネシアは民主主義、さらにインドとブラジルは日独と組むG4として中露に国連安保理改革を要求してきた「持たざる側」だと、内部の温度差を指摘する。

③ インドもホルムズ海峡封鎖は困るなど国益は常に一致せず、インドはクアッドにも参加している。日本はBRICSに過剰反応せず、情報収集は怠らないまま、加盟する友好国を通じて間接的に声を届ければよい ― これが結論。

動画の概要

元駐オーストラリア大使・山上信吾氏が、平場で開催されたBRICSサミットを受けて、「BRICSと日本はどう付き合うべきか」を解説した回です。BRICSの成り立ちと拡大、その内部に存在する政治体制・国際的立場の大きな温度差を整理したうえで、日本としての現実的な距離の取り方を示します。後半では、権威主義国に大使として赴任することの実際や、山上氏自身の香港総領事館時代の体験談にも話が及びます。

主なポイント

1. BRICSとは何か ― 5カ国から10カ国へ

  • BRICSは国名の頭文字。B=ブラジル、R=ロシア、I=インド、C=チャイナ(中国)、S=サウスアフリカ(南アフリカ)
  • 枠組みの発足は2009年頃
  • 現在は当初の5カ国から拡大し、エジプト、イラン、アラブ首長国連邦、エチオピア、さらに東南アジアのインドネシアまで加わって10カ国に
  • 先進国が打ち立ててきた国際秩序に対し、別の対抗軸を打ち出そうとする動き。分かりやすく言えばG7に対するアンチ勢

2. 「BRICSはBREAKS」― 一枚岩ではない

  • 政治体制の違い:中国・ロシア・イランは権威主義体制だが、インド・ブラジル・インドネシアは曲がりなりにも民主主義が定着し、選挙による政権交代が起きる
  • G7のような均質性は高くない
  • 国連での立場の違い:中国とロシアは安保理の常任理事国で拒否権を持つ「持てる側」
  • 一方インドとブラジルは、日本・ドイツと同じく安保理改革を求め「自分たちも常任理事国に入れろ」と中露に突きつけてきた「持たざる側」。日独印伯のG4という枠組みで一緒に改革を要求してきた間柄
  • BRICSはもともと中国が自らの仲間作りのために進めてきた色合いが強く、その限界も露わになっている

3. 国益は常に一致しない

  • イランが加盟しているのに「中東情勢を深く懸念」と共同宣言で述べる ― どうしても角の取れたものにならざるを得ない
  • インドはホルムズ海峡に依存しており、イランによる海峡封鎖など困る立場。権威主義の中露との間でさえ国益が常に合致することはない
  • ただし「対西側」、とりわけ「対アメリカ」という観点ではまとまりやすい
  • それでもインドはかつての非同盟ではなく、アメリカとも是々非々で協力を進める姿勢を強く打ち出し、安倍元首相が作り上げたクアッド(日米豪印)にも参加している
  • 中国から見れば、そのクアッドこそが気になる存在。「お互い様」という面がある
  • 中国は友達が少ないため、BRICSを大事にしたい気持ちは強いだろう、と分析

4. 日本はどう付き合うべきか

  • 中露は「G7はアメリカとその子分」と見立て、それに対抗してBRICSを打ち出している
  • 彼らはグローバルサウスや新興国の声を代弁する受け皿としてBRICSを売り出し、「世界を動かしているのは先進国のG7ではない、人口でも中国とインドを抱えるBRICSこそが世界を代表している」と主張したい
  • 中露イランという権威主義の3カ国が入っているため、オールドメディアの注目も集めやすい
  • 一方でインド、インドネシア、UAEといった日本の友好国も加盟している
  • それらの国を通じて日本は間接的に声を届け、影響力を行使できる
  • 結論:「BRICSができたから大変だ」と過剰反応する必要はない。ただし何が起きているかは注意して情報収集し、目を光らせておく必要はある

5. 権威主義国への赴任という現実

  • オーストラリアのような国に赴任するのとは全く別の気苦労がある
  • オーストラリアなら政策協議は「分かった、では日本と協力しましょう」と進む場面が多い
  • 中国やロシアではそもそもカウンターパートが会ってくれない。優先順位が低い、あるいは「日本は少し干してやろう」ということで、アポイントメントを取ること自体が大苦労
  • 外交当局間でいわゆる袖の下までは考えにくいが、他の当局ではしばしばあると聞いているという

6. 山上氏の香港時代 ― 失われた「一国二制度」

  • 山上氏の赴任先はアメリカ、イギリス、オーストラリア、スイス、そして中国の香港
  • 香港返還は1997年。山上氏の在勤は1998年〜2000年で、まだ一国二制度が守られ、言論の自由も集会の自由もあった時代
  • 香港当局の人間とも協力関係が築け、今でも懐かしい2年間だという
  • 当時の香港のエリート層はアメリカ留学組よりイギリス組(オックスブリッジ)が多く、イギリス英語に近かった。裁判官にもイギリス出身者が何人もいた
  • 統治時代の趣が街並みにも残っていたが、今の香港は全く違ってしまった
  • 「自分はもう二度と香港の土は踏めないと思っている。行ったら捕まる」と語り、「外務省は自業自得だと言って絶対に助けてくれない」と苦笑する場面も

まとめ・結論

BRICSは10カ国に拡大しG7への対抗軸として存在感を示そうとしているものの、政治体制も国連での立場も国益もバラバラで、「BREAKS(壊れる)」と呼べるほど内部に亀裂を抱えている ― というのが山上氏の見立てです。中国が仲間作りのために育ててきた枠組みであり、その限界も見えてきている。したがって日本は騒ぎ立てる必要はなく、動向は冷静に注視しつつ、加盟する友好国というチャンネルを通じて間接的に影響力を及ぼしていけばよい ― タイトルの「日本はそこそこに付き合えば良い」が、そのまま結論になっています。


▶ 元動画を視聴する(外交官チャンネル〜山上信吾10minutes〜)

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この記事を書いた人

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