【及川幸久】トランプが習近平に「日本への規制を解け」と迫った本当の理由【THE CORE】

▶ 元動画:https://www.youtube.com/watch?v=AAtJ78Sli68

目次

■ 3行でわかる

① 9月のワシントン米中首脳会談で、トランプ大統領が習近平主席に「日本へのレアアース輸出規制を解除せよ」と迫ったと、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが10月8日に匿名関係者の話として報じた。

② 背景には、戦闘機F-35やミサイル誘導装置に不可欠な高性能ネオジム磁石の世界生産の約9割が中国、残りの大半が日本企業という構造があり、米国防総省は2027年から中国産レアアースを使った磁石を防衛装備に使えない。

③ 中国の対日ジスプロシウム・テルビウム輸出は今年1月以降ゼロで、代替供給の本格化は2028年以降のため、日米は備蓄・リサイクル・外交で時間を稼ぐしかなく、日中首脳会談と中国の貿易統計が今後の焦点となる。

動画の概要

THE COREの及川幸久氏が、米中首脳会談でトランプ大統領が「日本のために」中国へ規制解除を求めたとされるスクープを読み解きます。その答えは、日本が世界をリードする高性能永久磁石(ネオジム磁石)と、その原料となる重希土類にあり、トランプ氏の行動は日本のためというより米国自身の安全保障上の実利のためだと解説しています。

主なポイント

1. スクープの内容:米中会談で「日本」が議題に

  • SCMP(10月8日)によると、トランプ氏は習氏に対日輸出規制の撤回を求め、日中首脳同士の対話も促した
  • 習氏は「日本の軍国主義がもたらすリスクが高まっている」と警告し、日中対立を米中関係から切り離すべきだと切り返したとされる
  • トランプ氏は、中国の対日レアアース規制が米国の産業にも悪影響を与えていると主張
  • あくまで匿名関係者に基づく報道で、米中両政府の公式発表ではない点に注意

2. ここまでの経緯(約1年の流れ)

  • 昨年11月7日:高市首相が国会で「台湾有事は存立危機事態になりうる」と答弁し、中国が猛反発(渡航自粛要請、日本産水産物の輸入停止)
  • 今年1月:中国国営のレアアース企業が一部日本企業に新規契約を結ばない方針を通知
  • 5月:トランプ氏が訪中。FTは、習氏が事前協議にない日本の再軍備を激しく非難し、会談で最も激しい場面になったと報道
  • 9月22日:高市首相が国連演説を前倒しし、ニューヨークで日米首脳会談。中国をめぐる課題での緊密な連携で一致
  • その2日後、習氏が約11年ぶりの国賓訪米、ワシントンで米中首脳会談

3. 鍵を握る「ネオジム磁石」と重希土類

  • ネオジム磁石は実用化された中で最強の永久磁石で、1980年代に日本人と米GMがほぼ同時に発明
  • 弱点は熱に弱く錆びやすいこと。高温での磁力低下を防ぐため、重希土類のジスプロシウムとテルビウムを添加したものが「高性能磁石」
  • EVやハイブリッド車の駆動モーター、データセンター、ロボットなど高温環境で不可欠
  • 一般的なフェライト磁石は磁力は弱いが安価で錆びず、冷蔵庫のマグネットやスピーカーに使われる

4. 米国が日本に頼らざるを得ない理由

  • 戦闘機、ミサイル誘導装置、潜水艦に必須。F-35は1機あたり約400kgの希土類を使うとされる
  • GMの磁石事業は1990年代に売却され、工場は中国へ。米国は発明国でありながら生産基盤を失った
  • 磁石の世界生産の約9割が中国、残りの大半がプロテリアル、信越化学、TDK、大同特殊鋼などの日本企業
  • 米国防総省は2027年から中国産希土類を使った磁石を防衛装備に使えないと法律で決まっており、中国以外の供給元はほぼ日本しかない

5. 対日輸出ゼロの現状と代替供給

  • 中国の貿易統計で、ジスプロシウム・テルビウムの対日輸出は今年1月以降ゼロ
  • 日本メーカーは必要量の約3分の2しか確保できず、備蓄でしのいでいる状態。重希土類は世界生産の約95%が中国で、日本の対中依存はほぼ100%
  • 代替策①:豪ライナス社(中国以外で初めて重希土類の分離に成功、日本が生産の半分を買い取る)
  • 代替策②:仏カレマグ社(日本企業が出資、早ければ2027年から調達)
  • 代替策③:南鳥島沖の海底(今年2月に水深約5,700mからレアアース泥の採取に成功、商業化は2028年以降)
  • いずれも現時点では量が足りず、不足は2027年まで続く見通し

まとめ・結論

トランプ大統領が日本のために動いたように見える今回の要請は、実際には中国以外でほぼ唯一の高性能磁石の供給元である日本を守ることが米国自身の国防・産業に直結するという「アメリカの実利」によるものです。代替供給が本格化する2028年までは、日米ともに在庫・節約・リサイクル・外交で時間を稼ぐ厳しい局面にあります。仲介の効果を測る材料は、①日中首脳会談が実現するか、②中国の貿易統計で重希土類の対日輸出が再び動くか、の2点だと及川氏は指摘しています。


▶ 元動画を視聴する(THE CORE)

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この記事を書いた人

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