▶ https://www.youtube.com/watch?v=MJk8JDTUoGE
■ 3行でわかる
① チームみらい党首の安野貴博氏は、4月発表の「Claude Mythos Preview」級の脆弱性発見能力を持つオープンウェイトモデル(GLM5.3など)が約5か月で拡散したとし、年末から来年初めにかけてサイバー攻撃が一段と悪化する恐れがあると警告した。
② AIのリスクは「AIの反乱」より「米中の正面衝突」、さらに今すぐ対処すべき「テロリストや悪意ある集団による悪用」が優先だとし、日本は半導体・国産AI・中堅国連合の「三正面作戦」で臨むべきだと提言した。
③ 政府に人件費の約3%にあたる1000億円のAI予算計上を提案し、AI失業は新卒採用の縮小から突然始まるとして、早期の兆候把握、成果連動型の職業訓練、給付付き税額控除など生活保障の議論を急ぐべきだと訴えた。
動画の概要
TBS CROSS DIG with Bloombergの番組「AI QUEST」に、番組初のゲストとしてチームみらい党首・参議院議員の安野貴博氏が出演。同じ東京大学松尾研究室出身のAI研究者・今井翔太氏(JAIST教授)とともに、AIによる人類滅亡リスク、米中AI戦争の中での日本の戦略、AI失業と政策の未来について議論しました(2026年10月6日収録)。
主なポイント
1. 深刻化するAIサイバー攻撃
- 安野氏は4月の「Claude Mythos Preview」発表時から、オープンウェイトモデルとの性能差は約半年で、同等の脆弱性発見能力を持つモデルが遅くとも1年以内に拡散すると警告していた。
- 実際に約5か月で、Anthropicのレポートが「Mythos Preview級」とするGLM5.3が登場した。
- 9月後半から公表されたサイバー攻撃の多くは数か月前の事案で、Mythos級以前のAIによるものとみられ、今年末から来年初めにかけて実戦配備されればさらに悪化しかねないという。
- 守り方のパラダイム転換が必要で、攻撃能力の高いモデルも使って自らのシステムを攻撃し続け、継続的に穴を探す体制が求められる。
- 安野氏は夏の閉会中に高市首相の「AI家庭教師」を務め、音声入力でバイブコーディングを体験してもらった。
2. 「AIで人類滅亡」の現実味
- 安野氏はリスクを、①AIの反乱、②AIを使い倒した米中の正面衝突、③テロリストやならず者国家・反社会的集団による悪用の三つに分類し、足元では③を潰すことに注力すべきだとする。
- 現状のAIはデータセンターの保守や発電、サプライチェーンを人間に依存しているため、人類を滅ぼすことはAIにとって自殺行為であり、物理世界の自動化(フィジカルAI)が進むまでは時間がある。
- 今井氏は、DNA生成モデル「Evo」で自然界に存在しないウイルスを作れることが実験で確認されていると指摘。オンラインで注文すると合成DNA・RNAが届くサービスもあり、規制などバイオセキュリティ対策は低コストで実現可能だとした。
- 開発の減速(ペーシング)は、シリコンバレーや上海の研究者の誰に聞いても「現実的ではない」との反応で、トランプ大統領も習近平国家主席も後ろ向きだという。今井氏は1〜2年以内に深刻な自律型AIエージェント事件が起きると懸念する。
3. AI研究者の「賞味期限はあと1年」
- フロンティアラボのスター研究者が「AI研究者としての自分の賞味期限はあと1年」と語り、AIがAIを改良する研究の自動化が目前に迫っている。
- ナビエ–ストークス方程式がAIで解かれ、フィールズ賞受賞者のセドリック・ヴィラニ氏は数学界を「アポカリプス」と表現。博士課程の学生に渡せる問題がなくなり、PhD学生を取るのをやめる数学者も出ている。
- フロンティアラボでは有限の計算資源を社内チームで奪い合う「半沢直樹状態」が起きているという。
4. 米中AI戦争と日本の「三正面作戦」
- 第一に、熊本のTSMCや北海道のラピダスなど半導体製造能力で交渉力を高める。
- 第二に、フロンティアから数か月遅れの国産AIを維持し、量子コンピューターの実用化などパラダイム転換時に追い越せる位置につける。
- 第三に、日本・カナダ・オーストラリア・フランス・ドイツ・韓国などミドルパワー国による連合。複数国が出資するCERNの加速器のように、共同投資で成果を分け合うモデルを探る。
- フランス政府はChatGPTやClaudeなど米国のクローズドモデルを使わず、自国サーバー上でオープンウェイトモデルを運用しており、最も使われているのはDeepSeekだという。安全性評価機関(AISI)を育てることが、オープンウェイトモデル活用の前提になる。
5. 政府に1000億円のAI予算を
- エージェント型AIの普及でトークン費用が急増するが、各省庁の概算要求はそれを織り込んでいない。
- AI費用はシステム費と人件費の中間的な性質を持つとして、人件費の約3%、約1000億円を計上し、約16万人の政府職員が使い倒せるようにすべきだと高市首相に提案した。
- 国産基盤モデル開発では、合議制ではなくDARPA型の強いリーダーシップで、現場の研究者に計算資源の配分権限を集めるべきだとした。
6. AI失業の脅威と政策
- スタンフォード大学の「炭鉱のカナリア」論文では、コールセンター、ソフトウェアエンジニア、コンサルなどでジュニア層の仕事が約15%減っており、日本でも新卒採用の縮小から始まると安野氏は予測。
- AI失業は徐々にではなく突然起きるため、①兆候を早く捉える統計、②転職実績に応じて補助金が出る成果連動型のリスキリング、③生活保障の三つが必要で、給付付き税額控除はベーシックインカムへの備えにもなると評価した。
- 今井氏は「無人島で役に立つ仕事」ほどAIの影響を受けやすいと指摘。新人の育成と戦力化が分離しOJTが成り立たなくなるため、大学院のように競争から切り離された育成の場が必要だと述べた。
- サンフランシスコのAIが経営する雑貨店では、AIに面接・採用された店員がいたが、銀行残高は10万ドルから約4.3万ドルに減り、うち3万ドルがトークン代だった。
- 日本は全産業で人手不足のため、AI失業と人手不足が隣り合う「モザイク状」になり、労働移動ができればしばらくは仕事がない状態は避けられるとの見方も示された。
まとめ・結論
AIの脅威は遠いSFではなく、オープンウェイトモデルの拡散によるサイバー攻撃やバイオテロ、新卒採用の縮小といった形ですでに足元に迫っています。安野氏は、半導体・国産AI・中堅国連合の三正面作戦で国際的な立ち位置を確保しつつ、政府自らがAIを使い倒す予算を確保し、突然訪れるAI失業に先回りして備える政策を急ぐべきだと訴えました。技術と政策の両方に通じた専門家が国会にいる意義が伝わる対談です。
▶ 元動画を視聴する(TBS CROSS DIG with Bloomberg)

