▶ https://www.youtube.com/watch?v=Ff5cSpwKWTU
■ 3行でわかる
① ルイジアナ州出身のジェイソン・モーガン氏が、スティーヴン・キングの「外から来る恐怖」と対比させながら、南部の文学「サザン・ゴシック」を紹介する。そこに描かれるのは「自分の心の中の残酷さ」という逃げられない恐怖だと語る。
② イザベル・ウィルカーソンの『カースト』を手がかりに、米国社会の土台には人種差別よりも深いカースト構造があると指摘する。南部の白人は「黒人を抑えなければ秩序が崩れる」という恐怖から、リンチを重ね、その写真を絵はがきにして送ってさえいた。
③ 1955年のエメット・ティル殺害事件のように、先祖の罪は時がたっても消えない。それでも連邦政府の介入を経て、南部は悔い改めてきた。一方、「科学的人種差別」を世界に広めた北部には悔い改めがないとし、詳しくは次回の動画で語るという。
動画の概要
『表現者クライテリオン』チャンネルで、米国南部出身のジェイソン・モーガン氏(麗澤大学准教授)が、米国の人種差別問題を語った動画です。フォークナーやフラナリー・オコナーといった南部文学を手がかりに、南部社会が抱える「心の闇」の根っこを解き明かしています。北部との違いについては、続く動画で扱う予定です。
主なポイント
1. 「外の恐怖」と「心の中の恐怖」
- スティーヴン・キングに代表される米国のホラーは、墓地や殺人鬼、ピエロなど、外から来るよそ者を恐れる物語である。
- 南部では、歴史的に日常そのものがホラーだったので、モーガン氏はホラー小説を読まないという。
- 南部の文学「サザン・ゴシック」が描くのは、隣人や自分自身の心の中にある、逃げられない恐怖だ。
- 代表的な作品として、フォークナーの『死の床に横たわりて』(1930年)、テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』(1947年、ニューオーリンズが舞台)、ジョン・ケネディ・トゥールの『愚か者たちの連合』(1980年)を挙げた。
- 「南部の人々は大きなお化け屋敷に住んでおり、先祖が犯した罪の残響が今も響いている」と語る。
2. フラナリー・オコナーとカトリックの視点
- ジョージア州出身でカトリック信者のオコナーは、北部の大学に進んだが、南部なまりの英語が通じず苦労したといわれる。
- 北部のピューリタンには「自分たちは神に選ばれた」という意識があるのに対し、カトリックには毎日罪を悔い改める意識が強い。十字架にイエスの体がかけられているのは、苦しみの象徴でもある。
- 『賢い血』(1952年)の主人公ヘイズル・モーツは、中身のない「文化としてのキリスト教」に失望しながら、自ら苦難の道を歩む。
- 短編「すべて上昇するものは一点に集まる」は、ローザ・パークスのバス・ボイコット事件を背景に、人種の平等をめぐる親子の対立を描いた作品だ。「善良な田舎者」(1955年)では、信仰者よりも無神論者のほうが善い人物として描かれる。
3. 米国はカースト社会である
- イザベル・ウィルカーソンの『カースト』(2020年)は、米国社会の最も基礎にある問題は人種差別ではなく、かつてのインドのようなカースト構造だと論じた。
- 奴隷制から生まれた構造的な人種差別の下に、カーストの意識がある。これが南部の人種差別を理解する鍵だとモーガン氏は考える。
- 南部の人々は、「残酷なことをしなければ社会の秩序が崩れ、カオスになる」という恐怖を心の中に抱えてきた。外から見ればフレンドリーだが、それは表向きの姿だという。
4. 奴隷制のあとの「ジャングル状態」とリンチ
- 南北戦争の後、白人至上主義者は奴隷制なしで黒人を抑え込もうとし、暴力が際限なく続く状態がおよそ100年続いた。
- ビリー・ホリデイが1939年に歌った「奇妙な果実」(作詞・作曲はユダヤ系のエイベル・ミーロポル)は、木につるされた黒人の遺体を歌った曲である。
- リンチの犠牲になったのは黒人だけではない。カトリック信者やユダヤ人など、自分たちと違う人々も標的にされた。
- 南部に特有なのは、リンチの写真を絵はがきにして家族や友人に送ったことだ。「自分が秩序を守っている」と誇示する意味があったとみる。
- 1897年には、元奴隷所有者で政治家のレベッカ・フェルトンが、「秩序のためなら週に1000人をリンチしてもよい」と発言している。
5. エメット・ティル事件と悔い改め
- 1955年、シカゴからミシシッピを訪れていた14歳の黒人少年エメット・ティルが、白人女性に口笛を吹いたとされて殺害された。
- 母親は、息子に起きたことを隠さないため、棺を開けたまま葬儀を行った。実はティルには吃音があり、口笛の話も嘘だったという。
- 連邦政府という、より強い力が入ってきたことで、南部は「残酷さがなくても秩序は保てる」と思えるようになった。今では、人種差別は北部より南部のほうがはるかにましだとモーガン氏は言う。
- 悔い改めのない北部こそが「科学的人種差別」を世界に広めてきたとし、詳しくは次回の動画で語るとしている。
まとめ・結論
米国南部の人種差別の根っこには、「残酷さと秩序が隣り合わせ」というカースト社会の恐怖がある、とモーガン氏は語ります。サザン・ゴシックの文学は、その心の闇を正面から描いてきました。先祖の罪は消えないと認めたうえで悔い改めてきた南部と、それをしてこなかった北部という対比は、米国社会の分断を理解するうえで示唆に富む視点です。
▶ 元動画を視聴する(『表現者クライテリオン』チャンネル)

